ハマ弁日誌

弁護士大石誠(神奈川県弁護士会所属)のブログ 最近は相続の記事が中心です

特性を考える。

自宅の本棚を整理していたら懐かしい本が出てきました。


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大学生の頃に,ゼミの先輩におすすめをされて手に取った本でした。
就職活動を念頭に置いて勧められましたが,当時は,ロースクール進学のことだけを考えていたので流し読みをした程度でした(もったいない)。

最近,他事務所の弁護士さんと一緒に仕事をする機会が増え,それに伴って,自分の特性って何だろうなと考える機会も増えてきたので,少し読み返してみようと思いました。

この書籍は,「才能」と表現してしまうと仰々しいですが,「自身の特性を理解してそれを仕事に活かそう」をテーマにした本で,学習欲,活発性,共感性,競争性,原点思考,最上思考,未来志向etcの34の強みのうち,傾向として強い5つを,大量のアンケートに回答すると分析してくれるというものです。


私の傾向として強い5つは,以下のとおりでした。


①調和性
あなたは同意点を求めます。あなたは、衝突や摩擦から得るものはないという考えを持っているため、そのような争いを最小限にしようとします。周囲の人々が異なる意見を持っていることが分かると、あなたはその中の共通する部分を見出そうとします。あなたは彼らを対立から遠ざけて調和に向かわせようとします。
他の人が自分の目標や、主張や、強く抱いている意見を声高に話している時、あなたは沈黙を守ります。他の人がある方向に動き出すと、あなたは調和という名のもとに(彼らの基本的価値観があなたの価値観と衝突しない限り)、喜んで彼らに合わせてあなた自身の目標を修正するでしょう。


②学習欲
あなたはいつも学ぶ「プロセス」に心を惹かれます。内容や結果よりもプロセスこそが、あなたにとっては刺激的なのです。あなたは何も知らない状態から能力を備えた状態に、着実で計画的なプロセスを経て移行することで活気づけられます。最初にいくつかの事実に接することでぞくぞくし、早い段階で学んだことを復諦し練習する努力をし、スキルを習得するにつれ自信が強まるーーこれがあなたの心を惹きつける学習プロセスです。
あなたの意欲の高まりは、あなたに社会人学習ーー外国語、ヨガ、大学院などーーへの参加を促すようになります。それは、短期プロジェクトへの取組みを依頼されて、短期間で沢山の新しいことを学ぶことが求められ、そしてすぐにまた次の新しいプロジェクトへに取組んでいく必要のあるような、活気に溢れた職場環境の中で力を発揮します。

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無報酬のイソ弁

先日,こんなニュースがありました。


以下の記事より引用。www.kanaloco.jp

川崎市内で法律事務所を経営していた男性弁護士から長期にわたりパワハラを受けたとして、所属していた男性弁護士(35)が慰謝料などを求めた訴訟の判決で、横浜地裁川崎支部(飯塚宏裁判長)は27日、経営者によるパワハラを認め、慰謝料など計520万円の支払いを命じた。
被害者は司法修習を終え、2011年12月に同事務所に入所。16年3月に退職するまで、3年近くにわたりパワハラを受けた。
判決によると、経営者は14年1月ごろ、被害者の胸ぐらをつかみ、「うそつき野郎が」「おめえふざけんじゃねぇぞ」と大声を出してロッカーにたたきつけた。また、指示棒やスリッパでたたく、メールの宛先表示を「クズ」と設定するといった行為を繰り返した。
飯塚裁判長はこれらの行為を事実と認め、「優越的な立場を利用し、適正な指導の範囲を明らかに逸脱して行われたもので、違法なハラスメント行為というほかない」と指摘した。
事務所の依頼で被害者が担当した事件については、業務委託報酬の支払いも命じた。」(引用終わり)


被害者は就職先の事務所で2年目の途中から給与を支払ってもらえなかったとして,給与の支払いも請求していましたが,判決は独立した個人事業主であることを理由に,”給与としての”支払いは認めなかった一方で,被害者が担当した事件については”業務委託報酬”を支払うことも命じました。
給与なのか,業務委託料なのか,その呼び方は別として,無給で働かせることは良くないよねという考慮がされているのだと思いました。


今回は,士業に対する対価をテーマに判決をいくつか紹介しようと思います。


1 【税理士の場合】
東京地裁 平成29年(ワ)第15804号 令和2年3月10日判決
税理士である原告が,相続税の申告業務等を依頼され,これを行ったにもかかわらず,依頼者である被告らは,委任の事実自体も否定して一切の金員の支払いをしなかったため,委任契約に基づく報酬請求として517万1442円の請求をした事案。

裁判所は,相続税の申告書に被告らの押印がされていること,税理士が納付額を預かって納付手続を行っていること等から,委任契約が成立していることを認めました。
また,原告は税理士であって,委任事務を処理して報酬を得ることを業とする者であること等から,税理士の旧報酬規定に基づいて報酬額を算定することが相当だとして,一部認容の判決を下しました。


2 【弁護士の場合】
東京地裁 平成28年(ワ)第17988号 平成30年4月10日判決
東京弁護士会に所属する弁護士である原告が,医療法人である被告との間で,民事再生手続開始の申立てを含む委任契約を締結し,委任契約に沿った事務を行ったにもかかわらず,被告がその報酬を支払わないため,委任契約に基づく報酬請求として2429万円の請求をした事案。

被告からは,委任契約が公序良俗に反するので無効だ等の反論がされましたが,裁判所は,旧報酬規程では民事再生事件の報酬額については,その経済的利益の額を基準として,経済的利益に応じて決まるとされており,委任契約書の記載がいずれも一応,旧報酬規程の文言と矛盾したり,大きく乖離するものではないこと等から,請求額の約80%を認めるとの判決を下しました。


3 【公認会計士の場合】
東京地裁 平成27年(ワ)第4977号 平成28年3月24日判決
公認会計士である原告が,被告会社が出資した映画を製作した会社に対する経費の支出及び収入の管理に関する財務調査を依頼され,当該業務を実施したので,依頼者である被告会社に対して,業務委託契約における報酬特約に基づいて,業務委託料308万円の支払いを求める等した事案。

被告会社は原告への調査委託の事実を否定しましたが,裁判所は,有償の業務委託契約の成立と,業務に費やした時間(6月が114時間,7月が40時間)を契約内容に照らして,請求額の満額を認めるとの判決を下しました。


デザイナー・プログラマー・ライターなどのフリーランスでも,報酬の切り下げが定着化しています。
「他人に仕事を依頼する場合には,相応の対価を払う(対価が払えないのであれば自分でする)」が当たり前の社会になると良いですね。



弁護士 大石誠(神奈川県弁護士会所属)
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給与ファクタリング

まとまった時間が必要な仕事は,平日夜か,平日夜でも時間が足りない場合にはGWのような大型連休を使うことになりますが,今年も漏れなく,大規模な案件の準備時間となっています。


休憩中に,最近の判例時報を読んでいたところ,最近話題の給与ファクタリングについての裁判例が掲載されていました。



「お金の貸し借り」を「給与という権利の売買」にしてしまって,さも借金ではないかのように思わせるという手法が広まっています。



「一般に「ファクタリング」とは、事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス(事業者の資金調達の一手段)であり、法的には債権の売買(債権譲渡)契約です。
また、最近では、このスキームを個人に当てはめ、個人が勤務先に対して有する給与(賃金債権)を、給与の支払日前に一定の手数料を徴収して買い取り、給与が支払われた後に、個人を通じて資金の回収を行う「給与ファクタリング」という手法も現れています。
下記のとおり、「給与ファクタリング」を業として行うことは、貸金業に該当します(貸金業を営む者は、財務局長又は都道府県知事の登録を受ける必要があります。登録を受けずに貸金業を営む者はヤミ金融業者です。)。
また、「事業者向けファクタリング」についても、経済的に貸付けと同様の機能を有していると思われるようなものは貸金業に該当するおそれがあります。
新型コロナウイルス感染症に便乗して、ヤミ金融業者による違法な貸付け等が行われる懸念もありますので、ヤミ金融業者を利用することのないよう十分注意してください。」
金融庁のホームページより引用 ファクタリングに関する注意喚起:金融庁 )
とあります。



判例時報に掲載されていたのは,「給与という権利を買い取った業者」から「給与という権利を譲渡した労働者」に対して,労働者が受け取った給与を支払え,という裁判を起こしたというものでした。


「売買」という体裁を取れば,貸金業法出資法の規制をかいくぐることが出来てしまいますので,”このスキームって本当に「売買」と言い切って良いの?”がポイントでした。

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閑話(春JDA決勝)

頭と手のリハビリと思い,(かなり時機後れですが)春JDA勝戦を肯定側第1立論~肯定側第2反駁まで聞きました。もちろんフローシートを取りながら。


www.youtube.com



16:42〜試合が始まります。

古典的な論題でもありますし,司法修習生になる直前に参戦したときにも使われていた証拠資料もあったので,それなりに頭も手もついて行けたように思いました。

感想
・1ARを終えた時点で,これはNegかな・・・でした。判定もNeg。
・Affは立論を2回終えるまでに置いた証拠資料がもう少し使い勝手が良ければ,と思いました。総論は良いとして,ミクロの分析で勝ちきれなかったと思います。
・1NRの冒頭のケースの返しを聞きながら,なるほど,2NCの最後に出てきたオカムラ2017,モリタ2020の証拠資料が効いてくるのねと。
証拠の使い方や活かし方というのは,弁護士の仕事にも通じるものがありますので,改めて,日々研鑽を続けなければと思いました。



コロナ渦で,これまでと同じように一つの会場に集まって大会を開くことができませんので,ZOOMなどWeb会議ツールが本当に便利な時代になったと思います。


アメリカでも同じように,ZOOMを用いて,オンラインで大会を開いています。


www.youtube.com


8:51~試合が始まります。

ZOOMの画面越しだと何を見ながら話しているんだ,となりますが,コロナ前はこんな風景(2014 NDT Finals - Georgetown AM vs Michigan AP - YouTube)でした。


一応,高校生のときに,英語ディベートの全国大会(HEnDA http://henda.global/ )にも第1回大会,第2回大会と二度出場しましたが,母国語ではないので全然聞き取れませんね(笑)

3月のニュース(消費税総額表示など)

一か月に一度は更新をと思いながら3月末となってしまいました。

有り難いことに,司法修習の同期が声を掛けてくれ,弁護士冥利に尽きるという案件を一緒に取り組んだり・・・という3月でした。


●正当防衛で無罪
横浜地裁で3月19日,傷害罪で審理されていた事件の無罪判決が出たとのニュースがありました。

横浜市内の路上で,70代男性(Vさん)から殴られた60代男性(Aさん)が,Vさんを殴り返したために,Vさんが転倒し,外傷性くも膜下出血などの怪我を負ったという事件だったようです。
AさんがVさんを殴った行為には正当防衛が成立するとして無罪判決が出ました。


同性婚の実現に一歩前進
札幌地裁で3月17日,同性婚が認められないのは違憲であるとして,北海道の同性カップルが国を相手に起こした裁判の判決がありました。
原告となった同性カップルが婚姻届を提出したところ,受理されなかったことに対して,同性婚を認めない法律は憲法に違反すると主張していたようです。

裁判所は,概要,
異性愛・同性愛という性的指向は,人の意思によって選択・変更できない事柄であること
②婚姻によって享受できる法的な利益は,同性愛者であっても異性愛者であっても等しく享受しうる利益であること
③同性愛を精神疾患とすべきとの知見を前提とする立法は,その前提を欠いていること
を踏まえて,異性愛者には婚姻という制度を利用する機会を提供しているのに対して,同性愛者に対して,婚姻という制度によって生じる法的な利益の一部すらも受け取る制度を提供しないとしていることは,憲法14条1項(法の下の平等)に違反するとしました。

最後は国会が解決するしかありませんが,同性婚の実現に一歩前進といったところでしょうか。


●司法試験の出願者数
2021年の司法試験の出願者数が3,754人との発表がありました。

2012年~2015年頃の出願者数が約1万人前後で推移していたことを思うと急激な減少だと思います。

見方を変えれば,合格者数を大幅に削減されない場合,合格するには今年がチャンスかなと思います。


●ファクト確認団体の設立?
ヤフーなどのインターネット事業者でつくられる「セーファーインターネット協会」は,ネット上に拡散されるフェイクニュース対策として,情報の真偽を検証する「ファクトチェック」を行う団体を設置するように総務省有識者会議に求めたとのニュースがありました。

全国教室ディベート連盟・読売新聞が主催した,第24回ディベート甲子園高校の部の論題が「日本はフェイクニュースを規制すべきである。是か非か」で,審判をやる度に,ファクトチェックは簡単にできるものなんだろうかと思っていましたが,正にこれから取組の方向性を議論していこう,ということでした。
https://www.saferinternet.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/Disinformation_interim-report.pdf

またこうして中学生・高校生が時代に先駆けて,青春をかけて議論したことが,その実現に向けて進みますね。


●消費税の総額表示
4月1日から,商品やサービスに表示される価格について,消費税の総額表示が義務化されます。
消費税の総額表示の義務は,平成16年から施行されていましたが,消費税が8%,10%と上がっている過程で,特例として税別価格であることが表記されていれば,税込の表示までは必ず必要とはされていませんでした。
総額表示義務に違反した場合の罰則はありません。

これ,弁護士の仕事にも関係してくるのかなと頭をよぎりましたが,消費税法63条は,「事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)は、不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等(第七条第一項、第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。以下この条において同じ。)を行う場合(専ら他の事業者に課税資産の譲渡等を行う場合を除く。)において、あらかじめ課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の価格を表示するときは、当該資産又は役務に係る消費税額及び地方消費税額の合計額に相当する額を含めた価格を表示しなければならない。」としていました。

個々の案件毎の請求書・見積書・委任契約書は,不特定かつ多数の者に対する価格の表示ではないので,総額表示の必要はありませんでした。

以上,ちゃんと条文を確認しましょう,というお話しでした。



4月も花粉症に負けずに執務に取り組んでいこうと思います。


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最近のニュース(相続登記の義務化など)

気付けば2021年も12分の1が終わってしまいました。

最近のニュースで思ったことをいくつか書き連ねてみたいと思います。


1,相続登記の義務化
法制審議会にて,民法不動産登記法の改正要綱案が作成されました。
土地の相続登記を義務化し,3年以内に登記をしなければ過料を科すことを目指しているようです。
これだけを聞くと,被相続人が所有していた土地で,”いやぁこんな田舎の土地を貰ってもね”という場合はどうしてくれるんだとなりますが,相続した土地の所有権を手放せる制度も新設するとのことでした。

http://www.moj.go.jp/content/001340751.pdf


法制審の改正要綱案を読むと,土地の所有者から国に対して,土地の所有権を国庫に帰属させることについて承認を求めることができるようにする。
求められた場合,国としては,建物が無い,担保権が設定されてない,土壌汚染が無いなどの項目をクリアしている限り,国庫に帰属させることを”承認をしなければならない”とすることを目指すようです。

その他にも,「相続財産管理人」を「相続財産清算人」に変更するなど,また相続分野の法改正がありそうです。


2,男女交際で退学?
東京の堀越高校を退学になった女子生徒が,学校法人に対して損害賠償を求める訴訟を提起したというニュースがありました。
学校の校則には「特定の男女間の交際は,生徒の本分と照らし合わせ,禁止する」と定められているようで,これに違反したとして,自主退学を強いられたと主張しているとのことです。
https://www.sankei.com/affairs/news/210204/afr2102040022-n1.html

学校での生徒に対する処分は,基本的には校長先生の「合理的な教育的裁量に委ねられている」とされていますが,他方で,退学処分については他の処分と比べて慎重な配慮が必要だとされています。
裁判所も「例えば停学ならしょうがないにしても,退学までは・・・」という感覚を持っているということですね。

自主退学を勧告した事例では,
①その行為自体の内容(今回のニュースでは男女交際という校則違反),
②反省の状況,
③素行,
④これまでの学校の指導内容,
⑤家庭の協力の有無,
⑥自主退学を勧告するまでの経緯

を踏まえて,校長先生の裁量を超えているのかを裁判所が判断していくことになります。

男女交際という校則違反だけで自主退学の勧告というのは無理な話なように思いますので,学校側の代理人としては,素行に問題が無かったかを丹念に聴取しているところではないでしょうか。


弁護士 大石誠(神奈川県弁護士会所属)
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迎春

気付けば怒涛の年末が過ぎ、2021年を迎えました。

年末年始のまとまった時間を確保できる時期に行いたかった案件に取り組みつつ、普段読むことができなかった書籍とも格闘しています。

・完訳 7つの習慣

完訳 7つの習慣 人格主義の回復 | スティーブン・R.コヴィー, フランクリン・コヴィー・ジャパン |本 | 通販 | Amazon

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ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則 | ジム・コリンズ, 山岡洋一 |本 | 通販 | Amazon

ドラッカー

チェンジ・リーダーの条件―みずから変化をつくりだせ! (はじめて読むドラッカー (マネジメント編)) | ドラッカー, P・F., Drucker, Peter F., 惇生, 上田 |本 | 通販 | Amazon

この辺りは読もう読もうと思いながら、普段は眼前の案件とそれに関連する文献を優先してしまっていましたので。

 

本年も新型コロナウィルス感染症に留意しながら執務して参ります。

 

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