ハマ弁日誌

弁護士大石誠(神奈川県弁護士会所属)のブログ 最近は相続の記事が中心です

【メモ】遺産共有と共有持分の併存

●遺産共有持分と他の共有持分が併存する場合における共有関係の解消 「判例(最二小判平成25年11月29(民集67巻8号1736頁))は、遺産共有持分と他の共有持分との共有関係を解消する方法として裁判上採るべき手続は、共有物分割訴訟であり、その共有物分割…

行政と民間の境界線

横浜市では、2024.1〜2025.3まで「お悔やみ窓口」を鶴見区、瀬谷区に試験的に設置をしています。 死後事務のうち、役所関係の手続を一つの窓口で完結させるという試みです。 終活・相続を扱う上で、行政の取組みを勉強しておくことも重要だと思い、市会議員…

特別寄与料

最高裁判所のウェブサイトを見ていたところ、特別寄与料に関する判決が出ていました。民法1050条は、被相続人に対して無償で療養看護等をしたことにより被相続人の財産の維持について特別の寄与をした「被相続人の親族」から、相続人に対して特別寄与料を請…

【メモ】家事審判申立書の送達

「家事審判の申立書の写しの送付またはこれに代わる通知をすることができない場合(例えば、申立書記載の相手方の住所の記載に不備がある場合)には、そのままでは手続を進めることができなくなる。そこで、第2項*1は、第49条第4項から第6項までを準用し…

【メモ】不動産競売の執行費用

「執行費用は、共益費用であるものと共益費用でないものとに分けられ、共益費用であるものを手続費用という(民執63条1項1号・188条参照)。この手続費用の配当の順位は最先順位として扱われるが、それを根拠づける直接的な規定はない。手続費用は当該執行…

相続登記の義務化など

「令和6年から始まる、相続関係の新制度の解説」と題して、笑顔相続サロンのコラムに寄稿させて頂きました。令和6年から始まる、相続関係の新制度の解説 笑顔相続サロンいよいよ、相続登記の義務化が始まります。また、戸籍法の改正により、「被相続人の出…

相続相談会@元町中華街

シニアライフ相談サロン めーぷる@MEGAドン・キホーテ港山下総本店にて、相続相談会を担当させて頂きました。 相続相談は弁護士だけで対応を完結することができず、他士業(税理士、司法書士、行政書士、宅建士)との横断的な対応が不可欠です。 来月以降も…

遺言による相続分の指定

遺言・相続に関する相談を受けていると、被相続人の方が専門家に相談せずに作成した自筆の遺言書で、「相続分の指定」をしたものに遭遇することがあります。 民法902条 1 被相続人は、前二条の規定(注:法定相続分の割合に関する条文)にかかわらず、遺言…

【メモ】遺産分割前の預貯金債権の行使

条文 平成30年改正後 民法909条の2 「各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に第900条及び第901条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情…

【メモ】被相続人 韓国籍の相続放棄

●適用法 法の適用に関する通則法第36条「相続は、被相続人の本国法による。」 ⇒準拠法は韓国民法準拠法は韓国民法であるものの、日本に居住し、財産が日本にある場合、相続放棄の管轄は、日本の家庭裁判所になる(韓国民法を前提に。被相続人の最後の住所地…

遺言執行者の職務(遺贈×所有権移転登記抹消登記請求)(続)

職務上請求と言って、弁護士は事件処理にあたって必要な限度で戸籍謄本や住民票の写しを自治体から取得することができます。 先日、とある自治体に戸籍謄本を請求したところ、「手数料 無料」とのことで、定額小為替が返送されてきました。 郵送での請求だと…

YouTubeLiveに登壇しました

YouTubeLiveの紹介です 「争う相続から笑顔相続へ」

遺言執行者の職務(遺贈×所有権移転登記抹消登記請求)

遺言執行者の職務、遺贈についての解説です 「争う相続から笑顔相続へ」

ベ●ッセの顧客情報流出と訴訟代理権

裁判所が公開している判決書を研鑽していたところ、ベ●ッセの顧客情報流出に関する事件の判決が掲載されていました。平成27年頃に報道がされていた事件だと記憶しています。 興味深かったのは、被告らの反論の中に「訴訟代理権の欠缺」がありました。「本案…

隣地問題

宅地建物調停 ●対象 従来は、借地法・借家法にいう借地借家関係に関する紛争のみを対象とされていたが、現在では、使用貸借・地役権・占有権・相隣関係等、一般に宅地建物の利用関係の紛争も対象に含まれる。●管轄 紛争の目的である物件所在地を管轄する簡裁…

おひとりさまの終活

おひとりさまの終活についての記事です 「争う相続から笑顔相続へ」

【メモ】①相続分の譲渡の税務、②貸金庫の借主が死亡した場合の実務の取扱い

①相続分の譲渡の税務 「(1)他の共同相続人に無償で譲渡したときは、譲渡人は未分割遺産についての持分的な権利を失い、何らの相続財産も取得しないことになるので、これに相続税が課税されることはない。譲受人には、固有の相続分に譲り受けた相続分を加…

賃貸と離婚に関する2つの最高裁判決

早いもので令和4年もあと数日となりました。今月も実務上参考になる2つの最高裁判決がありました。 1、いわゆる「追い出し条項」の適否 賃貸物件の賃料を借主が3か月滞納するなどして、連絡も取れない場合には、「物件を明け渡したとみなす」という家賃保証…

【メモ】相続債務の弁済と相続放棄の関係

・相続人の固有財産となる死亡保険金を、保険会社に請求し、受領する行為は、相続財産の処分にあたらない ・相続人の固有財産である死亡保険金をもって行った被相続人の相続債務の一部弁済行為は、相続財産の処分にあたらない ・被相続人の猟銃事故共済につ…

財産開示手続

最高裁のホームページに興味深い決定が掲載されていました。 1 債務者の財産状況の調査方法 例えば、勝訴判決を得たものの被告(債務者)が判決に書かれた金員を支払ってくれない、養育費を支払う旨の調停が成立したのにこれを支払ってくれないといった場合に…

事実認定の勉強

現在、判例時報では「講話 民事裁判実務の要諦 ー裁判官と代理人弁護士の方々へ」が連載されています。個人的には以下の解説が勉強になりました(要約)。 【損害額の証明度の軽減】 最三判平成20.6.10裁判集民228.181は、原告の採石権に対する侵害行為に基…

フリーランス保護新法

今朝、こんなニュースがありました。「命令違反に罰金50万円以下 フリーランス保護新法で検討 政府」 https://news.yahoo.co.jp/articles/21b1e0a43c472e7f4c5cb077c6d41642adfcce5fnews.yahoo.co.jp この「フリーランス保護新法」、例えば、以下のような解…

【メモ】相続放棄と管理義務

(改正前の条文) (相続の放棄をした者による管理) 第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない…

ウーバーイーツのその後

一昨年にブログに書いた件の続報です。 ooishimakoto68.hatenablog.com 「ウーバーイーツ」の配達員の自転車に追突されて負傷したとして、被害女性が、配達員とサービスを提供するウーバージャパンに対して損害賠償を求めた事件について、配達員とウーバージ…

択一六法と相続分野の改正

一昨年に、択一六法【民法】2022年版を購入しました。 *1 が、今回、2023年版に買い替えました。 *2受験生の頃から慣れ親しんでいる名残で、改正部分を確認しようと思うと、択一六法を購入しています。 2022年版は債権法改正による改正部分が新旧合わせて併…

「●●ペイ」

2か月ぶりの更新となってしまいました。給与をキャッシュレス決済の口座に振り込む「デジタル給与払い」が解禁される見通しだとのニュースがありました。私も日常生活の中で「PayPay」を利用していますが、このキャッシュレス口座に給与を振り込めるように…

今月の判例雑誌

東京都の新型コロナの感染者数が、初めて1日当たり4万人を超える見通しとなるなど、感染が拡大しています。私自身も先日、初めて「COCOA」から接触通知がありました。 その日は職場と自宅の往復と、成年後見の関係で遠方の病院に出向いた日でしたので、おそ…

特定の宗教団体にまつわる裁判例をいくつか

7月8日、元首相が銃撃され、死亡するという事件が発生しました。その後のニュースで「特定の宗教団体」というキーワードがニュースを飛び交うようになりました。今回はこの「特定の宗教団体」に関する裁判例をいくつか紹介します。 1、宗教団体の信者などに…

納骨壇使用契約の解除

納骨堂や霊廟と呼ばれる建物にて、「納骨壇」を設置し、管理するという形式が普及しています。 納骨堂には、遺骨を収納するだけの「ロッカー型」、仏壇の形をしていて納骨と礼拝が同時に行える「仏壇型」、参拝ブースまで遺骨が自動搬送されてくる「自動搬送…

AI契約審査と弁護士法

弁護士法72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)には、「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若し…