ハマ弁日誌

弁護士大石誠(神奈川県弁護士会所属)のブログ 最近は相続の記事が中心です

養育費回収の代行?

とある著名人が養育費に関する新事業を立ち上げたとのニュースに接しました。

記事によれば,元配偶者に対して弁護士が連絡をし,養育費を毎月受け取るプランと,一年分を一括で受け取るプランとが用意されており,養育費に対する設定したパーセント(15%又は25%)でのサービス利用料が発生するという事業のようです。
例えば,月額10万円の養育費を,子が成人に達するまで10年間,毎月支払ってもらった場合,1.5万円/月×10年間=180万円のサービス利用料ですかね。

ちなみに,旧横浜弁護士会報酬規程によれば,養育費のような継続的給付債権の場合,報酬金の計算方法は,債権総額の10分の7の金額に対する16%となっています(本当はもう少し細かいですが,割愛します)。
例えば,月額10万円の養育費を,子が成人に達するまでの10年間,毎月支払ってもらった場合,10万円×10年間×70%×16%=134.4万円ということになります。

ひょっとすると,ひょっとするまでもなく, サービス利用料>普通に弁護士に委任した場合の費用 となりそうです。。

と,今回,記事にしようと思ったのは,こんなことではなく,これ非弁行為にならないのかな?という心配をしています。



1 非弁(ひべん)行為とは
弁護士法という法律があり,
①弁護士又は弁護士法人でない者は,報酬を得る目的で訴訟事件など一般の法律事件に関して代理,仲裁,和解その他の法律事務を取り扱ってはいけないし,これらを斡旋することを仕事にもしてはいけませんよ。
②誰であっても,他人の権利を譲り受けて,訴訟,和解その他の手段で,権利を実現することを仕事にしてはいけませんよ。
と決められています。
弁護士の資格を有していない人が,自己の利益(報酬)のために,他人の法律事件に介入することは禁止しておきましょうねというものです。
同業者の友人でネタになるのは,司法修習終了後~弁護士登録まで1か月程度の期間,就職先の事務所で仕事の手伝いをするような場合ですかね。おっと,あくまでネタです。



2 具体例
最近,よくインターネット上で見かける事例や今後心配だなと思うものとしては,
・賃貸借契約を解除する場合の敷金返還交渉
・退職代行(特に,有給休暇の買取,未払賃金・未払残業代の交渉,ハラスメントに対する慰謝料請求を含む場合)
・インターネットでの誹謗中傷に対する発信者情報開示請求や慰謝料請求
コンサルティング業者が顧客の依頼を受けて,顧客の取引先と交渉するケース
・同じ士業でも,行政書士の先生が書類作成を超えて,被害者あるいは加害者の代わりに示談交渉をするケース
などが,非弁行為に該当するのではないかと疑われるケースがあります。


もう少し詳細な例として,判例検索データベースに上がっている裁判例を紹介します。
【コインパーキングの経営者又は管理業者から委託を受けてその管理業務を営んでいた会社】が,コインパーキングの管理・運営業務を行っている会社から,コインパーキングにおける不正利用者に対する違約金等の請求,回収及びこれに伴う交渉を依頼され,不正駐車車両に対して貼り紙をしたり,違約金や和解金の名目で金銭を徴収した事例
【土地家屋の売買業を営む会社】が,不動産売買業等を営みビルを所有している会社から,賃借人らとの間での賃貸借契約の合意解除に向けた立ち退き交渉を行って,部屋を明け渡させた事例
③【行政書士】が,遺産相続の手続業務として,相続人調査・相続財産調査・財産目録の作成に加えて,遺産分割手続も受任した事例
④【行政書士】が,交通事故の被害者から,自賠責保険の申請手続・書類作成を有償で受任した事例
なども非弁行為として違法との判断がされています。
①②の事例については,弁護士法違反で起訴された刑事事件なので有罪判決。

他方で,交通事故で保険会社の担当者が登場してきますが,これは,保険会社「自身」が保険金の支払いを行う場合なので,「他人」の事件ではないと整理することになります。


一応,話題のホームページでは,弁護士法などの法令を遵守していますよと記載していますが,今後どうなっていくのか。。代表取締役の方は弁護士登録もしているようなので,非弁行為に該当しないように手当てをしているかとは思いますが。
士業の扱える業務の境界線や,法律事務を事業化するのは難しいですねというお話でした。


弁護士 大石誠(神奈川県弁護士会所属)
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