ハマ弁日誌

弁護士大石誠(神奈川県弁護士会所属)のブログ 最近は相続の記事が中心です

無断キャンセル

飲食店の無断キャンセルによって,飲食業界全体に生じている損害は,推計で年間約2000億円とも計算されているようです。
https://www.meti.go.jp/press/2018/11/20181101002/20181101002-1.pdf



宿泊施設についても同様の問題は起きているようで,今回,宿泊予約を無断キャンセルされた宿泊施設が,無断キャンセルをした予約者への損害賠償請求訴訟を提起したところ,予約を入れた男性らに対しての請求通りの支払いを命じる旨の判決が出たとのニュースがありました。
判決書を読んだわけではありませんが,報道によると被告らのうち一部は口頭弁論期日に出頭せず,また,別の被告は分割払いでの和解を申し入れているとのことです。

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民事訴訟法では
「当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合には,その事実を自白したものとみなす。ただし,弁論の全趣旨により,その事実を争ったものと認めるべきときは,この限りでない。」
「第一項の規定は,当事者が口頭弁論の期日に出頭しない場合について準用する。ただし,その当事者が公示送達による呼出しを受けたものであるときは,この限りでない。」(159条1項,3項)
とされています。

裁判の期日にて予約者が宿泊施設の主張した事実を争うことを明らかにしない場合や,予約者が口頭弁論の期日に出頭しない場合,裁判所は,宿泊施設側の主張した事実をそのまま認めることが出来るという規定です。
ニュースの事例では,出頭せず,また争うことを明らかにしない予約者との関係で,宿泊施設側の請求が全て認められたということになります。


どうせ宿泊施設側は強制執行まで出来ないだろうと考えているのか,あるいは,弁護士に全く相談をしていないのかまでは分かりませんが,裁判所から「訴状」という書類が届いたときには一度,弁護士に相談をした方が賢明ですよね。
例えば,「実は私は予約者ではない!」「予約はしたけども無断でキャンセルをしていない(予め連絡をした)」「キャンセル料を実は払っている」etcの言い分があったとしても,裁判の場で何も主張しなければ,言い分は無かったことと一緒ですので。


弁護士 大石誠(神奈川県弁護士会所属)
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