ハマ弁日誌

弁護士大石誠(神奈川県弁護士会所属)のブログ 最近は相続の記事が中心です

過労死ライン未満での労災認定

20代の頃に友人と一緒にお酒を酌み交わしながら朝まで語りあった思い出のお店の一つに,「庄や」があります。

従業員男性が脳内出血となり後遺症が残ったという事案で,残業時間がいわゆる過労死ラインに到達していなかったものの,勤務実態などを考慮して,労災認定されたという報道がありました。
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これまでは,発症前2か月~6か月の残業時間が平均80時間以上,または発症前1か月の残業時間が100時間以上があった場合,長時間労働が過労死の引き金になった可能性が高いと判断する,いわゆる過労死ラインと呼ばれる時間の目安がありました。
今年9月からは,少しばかり ー実務に関わる者にとっては大きな変化ですがー 基準が見直され,残業時間が過労死ラインに到達していなかったとしても,他の複合的な要因も総合的に考慮して認定することとなりました。
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【before】
発症前2か月~6か月の残業時間が平均80時間以上,または発症前1か月の残業時間が100時間以上があったか否か。

【after】
発症前2か月~6か月の残業時間が平均80時間以上,または発症前1か月の残業時間が100時間以上に至らないが,これに近い時間外労働がある。

勤務時間が不規則(※1)だったり,心理的負荷(※2)や身体的負荷を伴う仕事に従事している。

※1 拘束時間が長かったり,休日なく連続勤務をしたり,深夜勤務などです。
※2 上司等からのパワハラ・セクハラ,退職の強要や配置転換,過度に責任を負わされるといった出来事が代表例です。

という基準に変更されたのでした。


先のニュースの事案でも,脳内出血を発症した直近2か月~6か月の残業時間は,最大でも平均75時間半だったとのことで,従前の基準では労災認定を得ることができませんでしたが,今回,基準の変更後に初めて過労死ライン未満でも労災認定を得ることができたということです。


これまでは,なかなか厳しい見通しですとお伝えしていたご相談でも,労災認定や会社への損害賠償請求が認められる可能性が出てきました。


弁護士 大石誠(神奈川県弁護士会所属)
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