ハマ弁日誌

弁護士大石誠(神奈川県弁護士会所属)のブログ 最近は相続の記事が中心です

公務員の副業

和歌山市の消防署に勤務する消防士さんが、YouTubeにゲーム実況動画を投稿し、約115万円の広告収入を得たとして、地方公務員法違反による懲戒処分(減給1か月)を受けたとのニュースがありました。

news.yahoo.co.jp


地方公務員法では、

「職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。ただし、非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員及び第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員を除く。)については、この限りでない。」(38条1項)

として、許可のない副業を禁止しています。

公務員の副業は、公務員に対する信用を失わせるおそれ、職務上知り得た秘密が流出するおそれ、職務に専念されないおそれがあるので、禁止されているという理解が一般的です。

近年では、「働き方改革」の推進を受けて、2018年1月には「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が策定され、さらに、2018年6月の「未来投資戦略2018」では、国家公務員の兼業について環境整備を進めるとの方針が示され、2019年3月に国家公務員の兼業の許可基準が明確化されました。

地方自治体でも、これに歩調を合わせるようにして、例えば、兵庫県神戸市は2017年4月に全国初の副業・兼業の許可要件を定めました。
また、神戸市を参考にした奈良県生駒市でも2017年9月に副業・兼業の許可要件を定め、全国的に広まりつつあります。


国家公務員の場合であれば、不動産や駐車場の賃貸、太陽光電気の販売、家業を継承した農業について兼業の承認基準が定められています。
【参考 義務違反防止ハンドブックhttps://www.jinji.go.jp/fukumu_choukai/handbook.pdf


ニュースのあった和歌山市例規集を検索してみましたが、許可の基準として、
①その職員の占めている職と当該営利企業又は当該事業若しくは事務との間に特別の利害関係がなく、かつ、その発生のおそれがない場合
②公務員の信用を失墜するおそれがない場合
③職務の遂行に支障がなく、かつ、その発生のおそれがない場合
④その他法の精神に反しない場合

には、副業・兼業を許可すると定めています(とてもふわっとした要件ですが)。


今回のニュースに近い事例としては、自衛隊員が動画投稿サイトにゲームの攻略動画を投稿して広告収入を得たために懲戒処分を受けたというものや、市の職員が趣味の動画配信で報酬を得たために懲戒処分を受けたというものがあります。
また公務員の副業・兼業許可は、地域貢献やスキルアップによる本業への還元といった文脈で議論されることからしても、仮に、YouTubeでのゲーム実況動画配信の副業許可の申請をしていたとしても、(その結論の善し悪しは別として)②④を理由に許可されなかったのだろうと推測されます。



弁護士 大石誠(神奈川県弁護士会所属)
【事務所】
横浜市中区日本大通17番地JPR横浜日本大通ビル10階
℡045-663-2294
弁護士 | 横浜平和法律事務所 弁護士 大石誠 | Yokohama