ハマ弁日誌

弁護士大石誠(神奈川県弁護士会所属)のブログ

相続登記の義務化

最近、少しずつ「相続登記が義務化されると聞きましたが、私たちは対象ですか?」「内容を教えて欲しい」といったご相談に出会うことが増えてきました。

1 はじめに

不動産の所有者が亡くなり、前の所有者(被相続人)から、相続によって新たに不動産を取得した人(相続人)へ、不動産の名義を変えることを「相続登記」といいます。

法務局が自動的に、「あ! ○県●市×町1-2-3の田中太郎さんが死亡したので、お子さんの田中次郎さんに所有権を移転させます」と処理してくれるわけではありません。

相続人が相続登記の申請をしなければ、不動産の名義は故人のままになってしまいます。

相続登記がされないのが一代であればまだ誰が相続人となったのか辿ることができますが、二代目、三代目・・・と相続登記がされないままの状態が続くと、相続人を調査すること自体も難航し、所有者が不明な土地が発生してしまいます。

(私自身の体験談ですが、祖父が亡くなった際に九州の田舎にある不動産の登記を確認しましたが、曾祖父の名義のままになっていました。被担保債権が「米」という時代があったんですね・・・)

不動産登記簿から所有者が判明しない土地は、国土全体の22%にものぼり、相続登記の未了がその主要因とのことです。

高齢化の進展によって、相続登記がされないまま代替わりを繰り返し、ますます所有者が分からない土地が増える心配がされています。

2 相続登記の義務化

そこで、相続登記がされないまま相続が生じることを予防するために、不動産登記法の改正がされました。

改正法では「所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。」(不動産登記法第76条の2第1項)
として、相続から3年以内に登記申請をしなければならないと義務化されました。

正当な理由がないのに、この相続登記の申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処されます(164条1項)。

3 「え、でも相続登記って大変じゃないの・・・?」

義務になったというけれど、でも相続登記の申請って戸籍を集めたり費用もかかりそうだし、大変じゃないの?

ということで、相続登記がしやすいように法改正もされています。

「相続人申告登記」という制度の新設です。

よくある相続登記は、相続人の全員で「遺産分割協議書」という書類を作成し、実印で押印したものと戸籍謄本等の資料一式を法務局に提出するという方法でした。
しかし、他の相続人が、どこに住んでいるのかも、全部で何人いるのかも分からないというケースでは、遺産分割協議書を作成することも一苦労、下手をすると何年もかけて遺産分割調停やこれに付随する訴訟を行わなければならないということになり、市民にとって大きな負担です。

そこで、相続人が、自分一人で、所有者の法定相続人であるということを法務局に申し出れば良いという制度を新設することになりました。

改正法では「・・・所有権の移転の登記を申請する義務を負う者は、法務省令で定めるところにより、登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができる。」(不動産登記法第76条の3第1項)
とし、さらに続く条文で、相続から3年以内にこの申請をすれば、相続登記の申請義務を果たしたとみなしましょう、とされました。

つまり、他の相続人との間で、遺産の分け方について協議を整えなくても「私は相続人です」とだけ法務局に申し出ればそれでOKということになります。


また、「相続人申告登記」とは別の方法 ー従来から取ることができる方法ー ですが、ひとまず”法定相続分のとおりに登記をしておく”という方法もあります。
他の相続人がどこの誰で、誰の法定相続分がどれくらいの割合なのかが判明している場合には、相続人が、自分一人で「父2分の1、私4分の1、妹4分の1」で相続登記を申請します、といった形で、法定相続分のとおりに相続登記しておくということも可能です。

法定相続分のとおりに相続登記をしておいて、後から遺産分割協議を整えて、相続人の全員で登記申請をするという方法ですね。

「相続人申告登記」とどちらが良いかは事案によりけりなので、専門家に相談した方が良いでしょう。

なお、相続人申告登記という方法をとっても、とりあえず法定相続分のとおりに登記をしておくという方法を取っても、後日、正式に遺産分割協議がまとまった場合には、遺産分割の日から3年以内に改めて相続登記をする義務が生じます。

4 住所変更も義務に

不動産の所有者は、氏名と住所の組み合わせで表示されますが、意外と転居後に住所変更を忘れているケースが多いです。
住所が転々としてしまうと、所有者がどこに住んでいるのか把握することが難しくなることから、住所変更の申請も義務化されました。
(相続登記と同じように、正当な理由がないのに、この相続登記の申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処するとされています。)

5 いつから義務化?

令和6年4月1日から義務化されます。
また施行日よりも前に発生した相続についても適用されますので、「令和6年4月1日以前に被相続人が亡くなったから、相続登記をしなくて大丈夫」ということにはなりません。


法務省が概要をまとめた資料を作成しています。
https://www.moj.go.jp/content/001362336.pdf


放置していた相続登記や遺産分割はありませんか?一度確認をしておきましょう。


弁護士 大石誠(神奈川県弁護士会所属)
【事務所】
横浜市中区日本大通17番地JPR横浜日本大通ビル10階
℡045-663-2294
www.ooishimakoto-lawyer.com