ハマ弁日誌

弁護士大石誠(神奈川県弁護士会所属)のブログ 最近は相続の記事が中心です

特定の宗教団体にまつわる裁判例をいくつか

7月8日、元首相が銃撃され、死亡するという事件が発生しました。

その後のニュースで「特定の宗教団体」というキーワードがニュースを飛び交うようになりました。

今回はこの「特定の宗教団体」に関する裁判例をいくつか紹介します。


1、宗教団体の信者などによる献金等の勧誘行為について、宗教的行為であっても一定の場合不法行為となりうるとしたうえで,宗教団体に対しても不法行為責任を認めた事例

原告が、宗教団体や、この宗教団体の信者らによる霊感商法をはじめとする違法な資金獲得活動の被害にあったことにより、宗教団体本体とその信者らに対して不法行為に基づく損害賠償請求をしたケースです。

裁判所は、
一般的に、宗教団体が宗教的教義の実践や布教の一環として、献金を求めたり物品の販売を行うことそれ自体は、信教の自由として保障されるべきものであると前置きをしつつ、
「しかし,当該勧誘が,献金等を含む宗教的教義の実践をしないことによる害悪を告知するなどして,殊更に被勧誘者の不安や恐怖心の発生を企図し,あるいは,不安や恐怖心を助長して,被勧誘者の自由な意思決定を不当に阻害し,被勧誘者の資産状況や,生活状況等に照らして過大な出捐をさせるようなものであると認められるような場合には,当該行為が形式的には宗教的活動の名の下に行われているとしても,もはや社会的相当性を逸脱したものとして違法の評価を免れないというべきである。」等として、損害賠償請求を一部認めました。


また、宗教団体に対する損害賠償請求についても、
「一方,宗教団体の信者が不法行為により,他人に損害を被らせた場合,その宗教団体は,信者との間に雇用等の契約関係がなくても,実質的な指揮監督関係にあり,かつ,その不法行為が当該宗教団体の事業の執行について行われたものであるときは,民法715条に基づく使用者責任を負うというべきである。」として、

献金等の勧誘行為は被告宗教団体の教義に基づき、あるいはその実践であること
・明示ないし黙示の被告宗教団体の指揮監督のもとで行われていたこと
献金は,被告宗教団体の収入となっており、利益も被告宗教団体に帰属していること
を理由にあげて、宗教団体に対する請求も認められました。

東京地裁平成19年5月29日判決 判例タイムズ1261号215頁。
同様の事例として、①東京地裁判決平成18年10月3日 判例タイムズ1259号271頁、京都地裁判決平成14年10月25日 判例タイムズ1126号186頁など)



2、合同結婚式の事案につき、婚姻意思がなかったとして、婚姻無効確認が認められた事例

韓国ソウルで行われた、特定の宗教団体の合同結婚式に参加し、婚姻届を大牟田市長に提出した夫婦において、日本在住の日本人妻から韓国在住の同国人夫に対して婚姻無効確認訴訟を提起したケースです。

・この宗教団体の合同結婚式は、教祖が、数年間宗教団体に貢献した信者のうち、見ず知らずの者同士を、恣意にその相手方(相対者)としてあてがい組み合わせるもので、結婚式に参加する本人にはそもそも相手方を選択する権利はなかった。
・結婚式を終えても、その後数年間のいわゆる聖別期間が定められ、その期間中は、同居はもとより個人的に交際することさえ禁止されていた。
・妻は、この宗教団体の儀式のときを除いて、渡韓した際に数回夫に会っただけだった。
・妻が夫に会ったときにも、妻が韓国語を話すことができないため、当事者間にほとんど意思疎通はできなかった。
という事例で、

裁判所は、
本件婚姻届は、通常の社会観念からする夫婦としての関係を設定する意思に基づいてなされたものとは到底解し得ない。

として、婚姻は無効であると結論しました。

福岡地裁判決平成8年3月12日 判例タイムズ940号250頁)



本題から逸れますが、献金といえば、今年も最高裁判所から書類が届きました。

そう、「司法修習生のときに貸与を受けた修習貸与金を返済せよ」という通知です。

記載されているのは、納付目的は、「修習資金貸与金債権 10回のうち 2回目」

今年も返済額は29万9000円です。

令和4年7月25日が納付期限で、同日までの返済を徒過すると、翌日から年率14.50%の利率で延滞金が付加されます。

昨年も書きましたが、修習71期以降は「修習給付金」として、新64期以前と同趣旨の返還の義務がない給付金が復活したため、私を含めた新65期~70期の世代だけが最高裁から借金をして司法修習生時代の生活をした谷間の世代です。

ooishimakoto68.hatenablog.com


今年も速やかに献金ではなく)返済をしようと思います。


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