ハマ弁日誌

弁護士大石誠(神奈川県弁護士会所属)のブログ 最近は相続の記事が中心です

フリーランス保護新法

今朝、こんなニュースがありました。

「命令違反に罰金50万円以下 フリーランス保護新法で検討 政府」
https://news.yahoo.co.jp/articles/21b1e0a43c472e7f4c5cb077c6d41642adfcce5fnews.yahoo.co.jp


この「フリーランス保護新法」、例えば、以下のような解説記事があります。
sogyotecho.jp


どんな方向性で検討されているかというと・・・

【契約時の遵守事項】

●事業者が、フリーランスに対して業務委託を行うときは、業務委託の内容・報酬額等を記載した書面の交付または電磁的記録の提供(メール等)をしなければならない

●事業者、フリーランスと一定期間以上の間、継続的に業務委託を行う場合は、業務委託の内容・報酬額等に加えて、業務委託に係る契約の期間・契約の終了事由、中途解約の際の費用等を記載しなければならない

Q)事業者にとってフリーランスの特定は困難では?
Q)他法で同様の記載がある場合の適用関係は?
A)適用関係については施行までの間にガイドライン等で分かりやすくする

Q)フリーランス同士の取引にも適用すべきでは?
A)案の一部は、フリーランス同士の取引についても適用する

Q)オンライン上からダウンロード可能なフォーマットを提供すべきでは?
Q)柔軟な交付方法(チャット、アプリ)も可とすべきでは?
A)書面以外の交付方法については、フリーランスに係る取引の適正化の観点から適切なものとなるよう、柔軟な方法も幅広く認めるなど、取引の実態も踏まえて検討する

Q)記載事項に、業務量・ハラスメント窓口、一定期間の具体的基準等も追加すべき
A)過度の負担とならないよう必要最小限に絞るなど、取引の実態も踏まえて検討する
 

【中途解約・不更新の事前予告】

●事業者は、フリーランスと一定期間以上の間、継続的に業務委託契約を行う場合に、契約を中途解約するとき又は当該契約の期間満了後にその更新をしないときは、原則として、30日前までに予告しなければならない

フリーランスからの求めがあった場合には、事業者は、契約の終了理由を明らかにすること

Q)一定の場合には中途解約の事前予告を不要とすべきでは?
Q)事前予告期間の短縮を認めるべきでは?
Q)具体的な日数を定めるべきではないのでは?
Q)更新が繰り返され継続の期待権が生じている場合には不更新に合理的理由が必要では?
A)事業者が予告することが困難な場合等には、事前予告等を不要とするなどの例外も定めることとするなど、フリーランスに係る取引の実態も踏まえ、事業者による予告・理由の開示が適切に行われるよう検討する


【募集に関する義務】

●不特定多数の者に対して、業務を受託するフリーランスの募集に関する情報等を提供する場合には、その情報等を正確・最新の内容に保つこと
その際、業務委託の内容・報酬額等を明示すること
また募集時と異なる内容で業務委託をする場合には、その旨を説明すること

Q)特定少数への募集も義務の対象にすべきでは?
Q)事業者の住所、代表者氏名、連絡先も募集情報に記載すべきでは?
Q)行政機関から募集内容によるトラブル情報を得た際には募集情報の掲載削除をできるようにすべきでは?
Q)契約内容を募集に合わせる、募集時の条件を下回ってはいけない等、契約内容についての規定を設けるべきでは?
A)契約締結前のフリーランスが契約の相手方を適切に選択するための仕組みについて検討する

【報酬の支払時期】

●事業者は、フリーランスに対し、役務等の提供を受けた日から 60 日以内に報酬を支払わなければならない

Q)起算日となる「役務等の提供を受けた日」の考え方を明確に示すべきでは?
Q)役務提供後に報酬金額が確定する場合も考慮すべきでは?
Q)契約内容の変更に伴う納期期間の延長の場合も当初契約時の期日とすべきでは?
A)下請代金支払遅延等防止法の解釈・運用を参考としつつ、フリーランスに係る取引の実態も踏まえながら、規定のあり方を検討する

Q)報酬の支払遅延に係る規定を設けるべきでは?
A)報酬の支払遅延に係る規定は、遅延利息等は設けないことを予定している。遵守規定に違反した場合には、勧告(行政指導)や命令(行政処分)の対象とすることを検討している

【禁止行為】

フリーランスとの一定期間以上の間の継続的な業務委託に関し、①から⑤までの行為をしてはならない
フリーランスの責めに帰すべき理由なく受領を拒否すること
フリーランスの責めに帰すべき理由なく報酬を減額すること
フリーランスの責めに帰すべき理由なく返品を行うこと
④ 通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること
⑤ 正当な理由なく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること

⑥及び⑦の行為によって、フリーランスの利益を不当に害してはならない
⑥ 自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること
フリーランスの責めに帰すべき理由なく給付の内容を変更させ、又はやり直させること

Q)継続的取引に限らず、単発・短期も対象とすべきでは?
A)一人で業務を遂行するフリーランスにとって、一定期間以上の期間にわたって継続的な取引関係にある場合、当該発注事業者に経済的に依存し、従属的な立場に置かれやすいおそれがあることを踏まえ、フリーランスに対する業務委託のうち一定期間以上の取引を対象として、フリーランスに対し行ってはならない行為を定めるもの。
継続的な業務委託となる期間の定め方等、規制の在り方については、引き続きフリーランスに係る取引の実態も踏まえながら検討する

Q)「フリーランスの責めに帰すべき理由なく」を削除すべきでは
Q)発注者側に立証責任があることを明確にすべきでは?
Q)「フリーランスの故意又は重大な過失でないのに」とすべきでは?
A)基本的には業種・職種が多岐にわたるフリーランスについて、業種横断的に共通する必要最低限の規律を設け、その取引の適正化を進め、就業環境を整備するもの。そのため、「フリーランスの責めに帰すべき理由なく」との要件は適切なものと考えている

Q)何が「責めに帰すべき理由」にあたるか指針等で具体的に示すべきでは?
A)何が「責めに帰すべき理由」や報酬の減額に該当するかは、下請代金支払遅延等防止法の解釈・運用を参考としつつ、フリーランスに係る取引の実態を踏まえ、施行までの間に、ガイドライン等で明らかにしたい

【その他】

●ハラスメント対策を講じること

●出産・育児・介護と業務の両立との観点から必要な配慮をすること

●事業者が違反した場合、行政上の措置として助言、指導、勧告、公表、命令を行うなど、必要な範囲で履行確保措置を設ける

Q)抑止力を持たせるため罰則を設けるべきでは?
Q)規制の実効性を持たせるため指導監督機関(公正取引委員会/労働局など)を明確にした上で実効性ある人員配置を図るべきでは?
A)行政処分に従わなかった場合には罰則を科すこととするなど、本案が実効性のあるものとなるよう、検討する

Q)フリーランスに限らず、全商取引において適正化を図るよう、民事法の分野において取引無効、取引取消などの民事上の効果を生じるような制度を整備すべきでは?
A)本案は、業種・職種が多岐にわたるフリーランスについて、業種横断的に共通する必要最低限の規律を設け、その取引の適正化を進め、就業環境を整備するもの。よって、取引無効等、民事上の効果を生じさせるような規定は設けないことが適当と考えている

Q)フリーランスのうち、実態は雇用労働者である者について、労働関係法令の適用による適切な保護を図るべき
A)労働者性については、令和3年3月に策定した「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」でその判断基準を明確化した

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000241038
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000242184


類似の法律で、「下請代金支払遅延等防止法」(下請法)がありますが、適用対象は、例えば、情報成果物の作成を目的とする業務委託の場合には、親事業者の資本金が1000万円以上、下請事業者の資本金が1000万円以下(個人を含む)に限定されるなど、事業者の資本金規模と取引内容に制限がありました。

フリーランス保護新法は、下請法の適用がない、より小規模の事業者やフリーランスについても規制するものです。


冒頭で紹介したニュースは、抑止力・実効性を持たせるべきでは?との意見を踏まえて、
・新法で定める義務に違反する行為の是正命令に従わない事業者に対し、50万円以下の罰金を科す規定を盛り込む
・違反行為について事業者に報告を求めたり立ち入り検査を行ったりできる規定も設け、検査拒否にも罰則を適用する
という方向で検討しているというものでした。


新法の詳細が見えてくるまで、もうちょっとといった段階です。


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