ハマ弁日誌

弁護士大石誠(神奈川県弁護士会所属)のブログ 最近は相続の記事が中心です

遺言と相続リテラシー

先日、日経新聞社主催の相続シンポジウムに参加しました。

パネルディスカッション②のファシリテーターが、事務所の元先輩ということもあり、現地参加に応募したところ、当選。
パネルディスカッションで特に印象に残ったのは以下の点でした。

【日本人の死生観と相続観】

正常性バイアス
遺言がないことの不都合性についての啓蒙活動が必要

アメリカは、72歳以上の人口のうち81%が遺言書を残している。18歳〜34歳では24%
主要因はエステートプラン

・戦後の死生観の空洞化からの過渡期

・「他者との関係性を法的に文書化すること」への遠慮がある
(空気を読むことの対極の行為)

・「生と死を語り合うことで、他人の価値観に触れ、自分の価値観に気付く(死生観を形成する)機会を作ること」が大切
⇒これは縁ディングノートですね!

【認知能力と遺言能力】

・真意性の担保に付言事項(動機・経緯)を活用すると良い

公証役場では後日、遺言能力をめぐって紛争になるかもしれないと認識すると、遺言者の当日の様子を記載した“遺言メモ”を作成している。
これは23条照会や文書送付嘱託で取れる

・長谷川式で1ケタ台の点数の人は、認知症の検査をしないことも多い(一見して明らかだからテストする意味がない)。
そういう患者の、うっかり調子良いタイミングを捕まえて、その瞬間を切り取ってカルテに記載があるために、法的紛争になるのではないか。
ただ、医療現場の目的はあくまでも治療であって、カルテを目的外で使用されても…

アメリカでは第三者からの影響を受けた遺言ではないか、という観点からの訴訟が多い
典型は、庭師、看護師に相続させるという内容。遺言書作成のために弁護士を手配したのも庭師、看護師

アメリカには遺留分の制度がない。
また、ノーコンテストクローズという条項を入れておくことがある。
つまり、遺言無効確認訴訟で敗訴した場合には、有効な遺言で指定された相続分すら取得させないという条項。これで訴訟を牽制している面がある

ファシリテーターを務めておられた先輩の勇姿を拝見しつつ、非常に勉強になりました


弁護士 大石誠(神奈川県弁護士会所属)
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