ハマ弁日誌

弁護士大石誠(神奈川県弁護士会所属)のブログ 最近は相続の記事が中心です

【メモ】①相続分の譲渡の税務、②貸金庫の借主が死亡した場合の実務の取扱い

①相続分の譲渡の税務

「(1)他の共同相続人無償で譲渡したときは、譲渡人は未分割遺産についての持分的な権利を失い、何らの相続財産も取得しないことになるので、これに相続税が課税されることはない。譲受人には、固有の相続分に譲り受けた相続分を加えたものに応じた相続税が課される。

(2)他の共同相続人に相続分を有償で譲渡したときの相続分は対価相当額である。譲渡人は、持分的な権利を主張して代価を取得したわけであるから、取得した代価に対して相続税が課される。譲受人には、固有の相続分に譲り受けた相続分を加えたものから譲渡人に支払った金額を控除した価格に対し相続税が課される。前記の判例*1も、取得財産価格から負担金を控除することを認めている。

(3)三者に相続分を無償で譲渡したときは、他の共同相続人に相続分を譲渡する場合とは異なり、相続手続において持分的な権利を主張したうえ、これを第三者に譲渡したものと解することができる。また、民法上の理解でも、譲渡人が相続承継した財産を第三者が特定承継したと考えるほかないことから、譲渡人にも相続分に応じた相続税が課されることになる。譲受人に対しては、相続分に応じた財産の無償取得があったとして贈与税が課される。

(4)三者に相続分を有償で譲渡したときは、譲渡人には前記同様に相続分に応じた相続税が課され、かつ、ここで受領した対価は、資産の譲渡による対価として譲渡所得の発生原因になる。」

出典 東京弁護士会編「新訂第七版 法律家のための税法〔民法編〕」(第一法規 平成28年)356ページ

②貸金庫の借主が死亡した場合の実務の取扱い

「ア 賃借人としての地位は、相続人によって承継され、銀行は、被相続人の戸籍謄本により相続人を確認し、相続人全員の印鑑証明書を求め、相続人全員の立会いによって、貸金庫の開扉と格納品の搬出を認めることにしている。すなわち、金融機関は、貸金庫の開扉も処分行為と捉え、相続人全員の立会いを求めている。したがって、遺産分割によって、貸金庫の権利帰属が決定するより前に、共同相続人の一人から開扉の請求があっても、銀行はこれを拒否する取扱いとなっている。
イ 遺産分割調停では、相続人の一人が代表で貸金庫の開扉及び財産の保管をすることに他の相続人が同意すれば、中間合意調書を作成の上、任意に委任状を提出してもらい開披させることになる。
この協力が得られない時は、保全処分により財産の管理者を定めて(家事法200条)、貸金庫の開扉にあたらせるなどの手続を検討することになろう。

出典 片岡・管野「第4版 家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務」(日本加除出版 第4版 2021年)60ページ



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*1:最判平5・5・28判時1460・60