ハマ弁日誌

弁護士大石誠(神奈川県弁護士会所属)のブログ 最近は相続の記事が中心です

択一六法と相続分野の改正

一昨年に、択一六法【民法】2022年版を購入しました。
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が、今回、2023年版に買い替えました。
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受験生の頃から慣れ親しんでいる名残で、改正部分を確認しようと思うと、択一六法を購入しています。


2022年版は債権法改正による改正部分が新旧合わせて併記されていましたが、

2023年版には令和3年に改正された部分、
①相隣関係
②共有
③所有者不明不動産の管理命令
④管理不全不動産の管理命令
⑤相続財産の管理・清算

が反映されています。


取り扱いの多い分野との関係でいうと、新設された
・258条の2第2項(相続開始から10年を経過したときは遺産共有状態を解消するために、共有物分割訴訟を利用できる)
・262条の2~262条の3(所在等不明共有社の持分の取得、譲渡)
辺りはよく研鑽しておく必要がありそうです。


未だ遺産分割が行われておらず、遺産共有状態のままになっている不動産について、共有物分割訴訟を提起して、競売を求めた事案について、

遺産分割は、共有物分割の特別の手続として家庭裁判所の専属管轄とされていることを前提に、

遺産相続により相続人の共有となつた財産の分割について、共同相続人間に協議が調わないどき、又は協議をすることができないどきは、家事審判法の定めるところに従い、家庭裁判所が審判によつてこれを定めるべきものであり、通常裁判所が判決手続で判定すべきものではないと解するのが相当である。」(最判昭和62年9月4日集民151号645頁)

との判断があります。

そのため、これまでは何年かけてでも、あるいは何年放置してしまっていても、まずは遺産分割調停の成立を目指すことが求められていました。


今後は、「相続人申告登記」ができるようになることから、また従来からの方法としてひとまず法定相続分のとおりに相続登記を入れておくことができることから、共同相続人=登記簿上の共有者となる状況が予想されます。
ooishimakoto68.hatenablog.com


ところが、一旦は相続人申告登記や法定相続分の相続登記を入れたものの、その後、遺産分割協議がまとまらず、塩漬けとなってしまったケースが出てくるでしょう。

そういった事例でも「まずは遺産分割調停から・・・」とする理由はないことから、相続開始から10年を経過したときは遺産共有状態を解消するために、共有物分割訴訟を利用できる旨の規定が新設されました。


また、遺産分割調停であれば、遺産共有×寄与分×特別受益といった争点が複雑化する場合があります。

共有物分割訴訟では、寄与分特別受益をどう処理するのかと思いましたが、合わせて新設された904条の3では、相続から10年を経過した遺産分割については、特別受益寄与分の規定を適用しないとされています。

遺産分割を促す、あまり話題になっていないような、でも影響の大きい改正です。


寄与分特別受益が絡む不動産の相続事件では10年以内に遺産分割調停を
寄与分特別受益が絡まないか、絡むのだけれども何らかの事情で10年以上塩漬けになってしまった相続事件では、寄与分特別受益の主張ができないまま共有物分割訴訟という方法も

こんな整理になるのだと思います。


気付けばあと半年、施行は令和5年4月1日からです。


弁護士 大石誠(神奈川県弁護士会所属)
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