ハマ弁日誌

弁護士大石誠(神奈川県弁護士会所属)のブログ 最近は相続の記事が中心です

航空法のはなし

飛行機内でのマスク着用をめぐるトラブルがありました。

某航空会社の釧路発関西行きの機内で,マスクを着用しない男性客が客室乗務員やほかの乗客に対して大声をあげて威嚇したことから,機長は機内の秩序を乱す安全阻害行為があったと判断し,新潟空港に臨時着陸させ,男性を新潟空港で警察官に引き渡し,その後約2時間遅れで関西空港へ到着したというものです。

news.livedoor.com




日本には昭和27年に作られた「航空法」という法律があります。
改正によって,立法当時は想定していなかった「無人飛行機(ドローン)」の規制についても加えられている法律になります。


航空法73条の3は「航空機内にある者は,当該航空機の安全を害し,当該航空機内にあるその者以外の者若しくは財産に危害を及ぼし,当該航空機内の秩序を乱し,又は当該航空機内の規律に違反する行為(以下「安全阻害行為等」という。)をしてはならない。」とし,
73条の4は,1項で「機長は,航空機内にある者が,離陸のため当該航空機のすべての乗降口が閉ざされた時から着陸の後降機のためこれらの乗降口のうちいずれかが開かれる時までに,安全阻害行為等をし,又はしようとしていると信ずるに足りる相当な理由があるときは,当該航空機の安全の保持,当該航空機内にあるその者以外の者若しくは財産の保護又は当該航空機内の秩序若しくは規律の維持のために必要な限度で,その者に対し拘束その他安全阻害行為等を抑止するための措置(第五項の規定による命令を除く。)をとり,又はその者を降機させることができる。」とあります。

報道を見ていると機長がこれに該当すると判断したのだと思われます。



ちなみに,航空法73条の4第5項は「機長は,航空機内にある者が,安全阻害行為等のうち,乗降口又は非常口の扉の開閉装置を正当な理由なく操作する行為,便所において喫煙する行為,航空機に乗り組んでその職務を行う者の職務の執行を妨げる行為その他の行為であつて,当該航空機の安全の保持,当該航空機内にあるその者以外の者若しくは財産の保護又は当該航空機内の秩序若しくは規律の維持のために特に禁止すべき行為として国土交通省令で定めるものをしたときは,その者に対し,国土交通省令で定めるところにより,当該行為を反復し,又は継続してはならない旨の命令をすることができる。」とし,これに違反した場合には,航空法150条5号の4に該当するため,罰金50万円以下を法定刑とする処罰の対象となっています。

この国土交通省令で定めるものが何かというと,航空法施行規則164条の16に「・・・国土交通省令で定める安全阻害行為等は,次に掲げるものとする。」として,


①乗降口又は非常口の扉の開閉装置を正当な理由なく操作する行為
②便所において喫煙する行為
③航空機に乗り組んでその職務を行う者の職務の執行を妨げる行為であつて,当該航空機の安全の保持,当該航空機内にあるその者以外の者若しくは財産の保護又は当該航空機内の秩序若しくは規律の維持に支障を及ぼすおそれのあるもの
④航空機の運航の安全に支障を及ぼすおそれがある携帯電話その他の電子機器であつて国土交通大臣が告示で定めるものを正当な理由なく作動させる行為
⑤離着陸時その他機長が安全バンドの装着を指示した場合において,安全バンドを正当な理由なく装着しない行為
⑥離着陸時において,座席の背当,テーブル,又はフットレストを正当な理由なく所定の位置に戻さない行為
⑦手荷物を通路その他非常時における脱出の妨げとなるおそれがある場所に正当な理由なく置く行為
⑧非常用の装置又は器具であつて国土交通大臣が告示で定めるものを正当な理由なく操作し,若しくは移動させ,又はその機能を損なう行為

と8行為が掲げられています。


禁止行為が多く定められていることからしても,安全に飛行機が飛んでいるというコロナ前の日常は当たり前の光景ではないのだろうと思います。



弁護士 大石誠(神奈川県弁護士会所属)
【事務所】
横浜市中区日本大通17番地JPR横浜日本大通ビル10階
℡045-663-2294