ハマ弁日誌

弁護士大石誠(神奈川県弁護士会所属)のブログ 最近は相続の記事が中心です

無断キャンセル

飲食店の無断キャンセルによって,飲食業界全体に生じている損害は,推計で年間約2000億円とも計算されているようです。
https://www.meti.go.jp/press/2018/11/20181101002/20181101002-1.pdf



宿泊施設についても同様の問題は起きているようで,今回,宿泊予約を無断キャンセルされた宿泊施設が,無断キャンセルをした予約者への損害賠償請求訴訟を提起したところ,予約を入れた男性らに対しての請求通りの支払いを命じる旨の判決が出たとのニュースがありました。
判決書を読んだわけではありませんが,報道によると被告らのうち一部は口頭弁論期日に出頭せず,また,別の被告は分割払いでの和解を申し入れているとのことです。

www.asahi.com

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航空法のはなし

飛行機内でのマスク着用をめぐるトラブルがありました。

某航空会社の釧路発関西行きの機内で,マスクを着用しない男性客が客室乗務員やほかの乗客に対して大声をあげて威嚇したことから,機長は機内の秩序を乱す安全阻害行為があったと判断し,新潟空港に臨時着陸させ,男性を新潟空港で警察官に引き渡し,その後約2時間遅れで関西空港へ到着したというものです。

news.livedoor.com

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財産分与と建物明渡し

はてなブログから「前回の投稿から1か月経つけど,そろそろ次の投稿をしてはいかが?」と催促のメールが届いてしまいました。


●有料のレジ袋と,エコバッグの持参が浸透してきたように感じます。
レジ袋有料化前は,例えば,コンビニで「テープで結構です(レジ袋は不要です)」と伝えていましたが,最近ではこのように伝えても「レジ袋はご利用でしょうか」と聞き返されてしまうことが増えたように思います。
レジの店員さんのオペレーションが変わったためかと思いますが,原則例外がひっくり返ったために,「レジ袋は不要です」と明言した方がかえってお互いにストレスにならないのだろうと感じます。


●下半期から母校の法学部の学生に対して,刑事訴訟法の講義を担当することになりました。
司法試験の受験を目指している学生が対象ではありますが,まだ学部生ということで,情報を伝える相手の理解度・到達度に応じた「わかりやすさ」の追究には終わりが無いなと感じます。

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安楽死について

緊急事態宣言が解除されて時間が経ちますが,裁判所は完全に元通りかというとなかなか厳しい状況が続いています。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/44603www.tokyo-np.co.jp

裁判員裁判となると当事者を含めて多くの関係者のスケジュールを一斉に押さえないといけませんし,一斉に取り消したので・・・というのは理解できなくもありませんが,それにしても8か月は長すぎると思います(被告人が勾留されていれば尚更)。


ところで,安楽死に関するニュースが飛び込んできました。リンクを貼るのは控えますが,
・報道をまとめると,医師2人が京都市内のALS患者からの依頼を受けて,「100万円以上」の報酬(?)を受け取り,昨年11月にこの患者の自宅を訪れ,室内で薬物を投与し,死なせた疑いがあるというものです。
・医師2人はいずれも患者の主治医ではなく,嘱託殺人罪の疑いで逮捕されたというニュースです。


積極的安楽死の法制化の是非など,調査型の競技ディベートでもよく扱われるテーマですので,今回,記事にしてみようと思った次第です。


積極的安楽死とは
安楽死と言ってもいくつかその種類があり,
①死期が迫っており,堪え難い苦痛のある患者について延命治療を中止する「消極的安楽死
②苦痛の甚だしい死期の迫った人に対して,苦痛の軽減または除去するために死期を早める「積極的安楽死
とがあります。
前者は治療を中止することが許されるか,後者は治療の中止を超えて死期を早めることが許されるかという問題になります。

積極的安楽死を一定の条件下で合法とし,この問題について先進的な国の代表としてはオランダが挙げられます。
オランダでは,判例の集約によって,
①医学上不治と考えられる患者で,
②身体的又は精神的な苦痛が,患者にとって主観的に耐え難いか若しくは深刻である,
③患者が,文書又は口頭で,明示的に生命終結の意思を事前に表明した場合を条件に適法であると考えられてきました。

その後,社会的に浸透していったことを踏まえて,2001年には安楽死等審査法が成立し,翌年から施行されています。疾患別では,がんが最も多く,心臓・血管・肺・神経系の疾患を理由とする安楽死も実施されているようです。

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あおり運転厳罰化

ブログの題材にと感じたニュースが少なかったこともあり,気付けば前回の更新からかなりの時間が経ってしまいました。

今回は最近法改正がされた,あおり運転についての投稿になります。


6月30日から施行された改正道路交通法によって「妨害運転」に対する罰則が創設されました。
これは他の車両等の通行を妨害する目的で,急ブレーキ禁止違反や車間距離不保持等の違反を行う行為を取り締まるものです。
罰則の内容としては,①刑事罰として3年以下の懲役または50万円以下の罰金,②行政処分として一発で免許取消しとなります。また,高速道路での妨害運転については最大で5年以下の懲役または100万円以下の罰金となります。

早速,警察の方でも取り締まりをしてくれているようです。


平成29年に東名高速道路で発生し横浜地裁で審理されていた死亡事故など,あおり運転の事件が絶えないこともあり,罰則が強化されました。
ちなみに,この件については横浜地裁での一審判決に判決までの手続に問題があったとして,東京高等裁判所は判決を破棄し,事件を横浜地裁に差し戻しています。
www.sankei.com


また,道交法の改正のみならず,自動車運転致死傷罪についても改正され,走行中の車の前方で停止したり著しく接近する方法で運転する行為や,高速道路で走行中の自動車の前方で停止するなどして走行中の自動車を停止・徐行させるような行為によって他人を負傷させたり,死亡させた場合には重い刑事罰が加えられるようになりました。
改正された自動車運転致死傷罪については7月2日から施行されています。


ドライブレコーダーの普及によって,あおり運転被害の立証は容易になってきましたが,何よりも自身の安全が最優先ですので,
・挑発に乗らない。
・左側の車線へ移動するなどして関わらないようにする。
・サービスエリアなど安全な場所で停車し110番通報する。
・ドアをロックして窓を閉め,警察官が到着するまで車外に出ない。

等,落ち着いて対処したいところです。


弁護士 大石誠(神奈川県弁護士会所属)
【事務所】
横浜市中区日本大通17番地JPR横浜日本大通ビル10階
℡045-663-2294

自筆証書遺言書保管制度が始まります。

令和2年7月10日(金)から法務局にて自筆証書遺言書を保管する制度が開始します。


これは,自宅で保管されることが多い自筆の遺言書を,安全な法務局が用意した遺言書保管所で保管できるようにしようというものです。

また,自筆の遺言書が有効となるための条件についても改正された民法が昨年から施行されています。

ということで,今回は自筆の遺言書についての投稿です。

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再雇用の拒否はできない?

事務所で定期購読をしている判例タイムズに,実務上参考になるなと感じた裁判例名古屋地裁 令和元年7月30日)がありました。
65歳で大学を定年した大学教授が,大学に対して,再雇用の拒否は無効であると主張して裁判を起こしたという事例です。


1 お互いの言い分は?

概要は以下のようなケースでした。

教授「65歳で定年となったが,68歳まで再雇用できると決まっているので再雇用して下さい。」

大学「再任用の関する規程では,懲戒処分を受けた者は再任用しないと定めている。あなたは,別の教授のハラスメント行為について秘密を外部に漏らすなど,処分の対象となる行動を取ったので,在任中に譴責処分となっている。だから,あなたの再任用はしない。」

教授「でも,それは学生を保護する必要があったし,緊急だったので仕方がなかった。譴責処分にしたこと自体おかしい」

大学「それ以外にも,あなたは懲戒処分の情報が漏洩しないようにすべきだったのに,別の教授が懲戒処分に至ったことを学内の会議や研究科委員会などで話したり,メール送信しているじゃないか。」
大学「他にもあるぞ。その懲戒案件を扱う会議の連絡をするとき,処分を検討する教授と婚姻関係にあった教授だけは,他の教員と異なる取扱をしたではないか。」「あなたを懲戒するときにも適正な手続を踏んでいるのだから,懲戒処分に問題はないぞ」

教授「色々と懲戒処分の小さな理由を並べているけれども,大した理由もなく譴責処分にするのは行き過ぎている。だから,譴責処分は無効だし,譴責処分は無効である以上,再任用を拒否できる理由もない。」


2 裁判所の判断は?

このような言い分と証拠を見聞きした裁判所は,次のように判断しました。

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